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吉野家が「ラーメン世界一」を目指す理由とは?日本企業の海外進出戦略から学ぶ、世界市場での勝ち方

吉野家が「ラーメン世界一」を目指す理由とは?日本企業の海外進出戦略から学ぶ、世界市場での勝ち方

「吉野家が、ラーメンで世界一を目指している」

そう聞いたら、少し驚きませんか?

吉野家といえば、もちろん牛丼です。

ところが今、
その吉野家が2034年度までに
「ラーメン提供食数世界一」を目指し、
海外での事業拡大を進めています。

しかも、
世界市場へ積極的に
動き始めているのは吉野家だけではありません。

無印良品、JINS、サイゼリヤ、しまむらなど、
日本を代表する企業が、次々と海外事業を強化しています。

2026年10月27日付の現代ビジネスの記事
「吉野家が目指す『ラーメン世界一』、しまむらは台湾増資へ…
国内頭打ちを突破し“過去最高益”を連発する勝ち組チェーンの新戦略」
でも、こうした企業の動きが紹介されていました。

私は世界戦略プロデューサーとして、
この記事を非常に興味深く読みました。

なぜなら、
これらの企業に共通しているのは、
単に日本の商品を海外へ持っていくのではなく、
世界市場で成長するために、
自社の強みの生かし方を変えていること
だからです。

今回は、5社の海外進出戦略から、
日本企業が世界で勝負するためのヒントを考えてみたいと思います。

吉野家は、なぜ「牛丼」ではなく「ラーメン世界一」を目指すのか?

今回、
私が特に注目したのは吉野家です。

吉野家ホールディングスは、
牛丼、うどんに続く第3の事業の柱として、
ラーメン事業を強化しています。

2034年度までに「ラーメン提供食数世界一」
を達成するという目標を掲げ、
アメリカのラーメン店運営企業を子会社化するなど、
海外での事業拡大を進めています。

ここで考えてみてください。

吉野家は、
日本で牛丼という強力な商品を育ててきた企業です。

その企業が、
世界市場ではラーメンを新たな成長の柱にしようとしている。

これは、
海外進出を考えるうえで、とても示唆に富んでいます。

日本で成功した商品があるからといって、
海外でもその商品だけにこだわる必要はないのです。

むしろ、
世界市場を見渡したときに、
自社の経営資源を使って、どんな新しい事業を育てられるのか。

そこから考えることもできるわけです。

もちろん、
吉野家が牛丼事業をやめるわけではありません。

牛丼という強みを持ちながら、
ラーメンという新たな成長の柱を育てる。

海外進出は、既存事業の販売先を増やすだけでなく、
会社の未来を広げる機会にもなるのです。

無印良品は、海外店舗数が国内を逆転

無印良品を展開する良品計画も、
海外事業を大きく成長させています。

2026年8月期末の店舗数は、
国内760店舗に対し、海外824店舗。

ついに海外店舗数が国内店舗数を上回りました。

さらに、
2029年8月期には
海外事業の売上高比率を50%超にする計画です。

日本で生まれ、
日本で多くの人に親しまれてきた無印良品。

そのブランドが、
今や世界各地で事業を展開しています。

注目したいのは、
海外進出が一時的な挑戦ではなく、
企業の成長を支える中心的な事業になっていることです。

日本で売れているから海外でも売れる、
という単純な話ではありません。

国や地域によって生活習慣も購買行動も異なります。

その違いを踏まえながら、
世界各地で事業を育ててきた結果が、
現在の海外店舗数につながっているのでしょう。

JINSは、海外の営業利益が約3倍に

メガネブランドのJINSも、注目したい企業の一つです。

2026年8月期の海外事業の営業利益は22.19億円となり、
前期の約3倍に拡大しました。

JINSの強みは、
機能性やデザイン性を高めた商品開発力です。

単に価格の安さで競争するのではなく、
機能性やファッション性を備えた商品を展開しています。

さらに興味深いのは、
2026年3月に開業した銀座のグローバル旗艦店です。

記事によると、
この店舗を視察した海外の不動産開発会社から、
出店の要請が寄せられる事例もあるそうです。

つまり、日本国内の店舗が、
海外の事業者にブランドの魅力を伝える場にもなっているのです。

これは、
中小企業にとっても参考になる考え方です。

海外進出というと、
最初から海外へ営業に行くことを考えがちです。

しかし、日本国内で積み重ねてきた実績や商品力が、
海外の取引先に評価されるきっかけになる場合もあります。

大切なのは、
海外の相手が、自社のどこに価値を感じるのかを知ることです。

サイゼリヤは、海外で売上以上に利益を生み出している

サイゼリヤの海外展開も興味深いものがあります。

2026年8月期第3四半期累計では、
アジア事業の売上高は715.3億円。

グループ全体の売上高の約3割を占めています。

一方、営業利益は73.04億円で、
全体の5割強を占めています。

ここで注目したいのは、売上高と利益の割合です。

海外事業の売上が全体の約3割なのに、営業利益では5割強。

つまり、
アジア事業がグループの利益に大きく貢献しているのです。

日本国内で磨いてきた食材調達や調理工程の効率化、
低価格で商品を提供する経営力。

そうした強みが、
海外事業の収益性にもつながっていると考えられます。

海外進出を考える際、
どうしても「海外でいくら売れるか」に目が向きます。

しかし、
経営者にとって本当に重要なのは、売上だけではありません。

海外で、どれだけ利益を残せるか。

この視点を忘れてはいけません。

しまむらは、台湾に約48億円を追加投資

しまむらは、
2026年8月に台湾子会社への9.7億台湾ドル、
約48億円の増資を発表しました。

しまむらが台湾へ進出したのは1997年です。

つまり、長年事業を続けてきた市場に、
さらに投資を行うという判断です。

海外進出というと、
次々と新しい国へ進出することが
成功のように語られることがあります。

しかし、すでに事業が育っている市場で、
さらに存在感を高めるという選択肢もあります。

進出する国の数を増やすことと、
海外事業の利益を増やすことは、必ずしも同じではありません。

どの市場に経営資源を集中させるのか。

その判断も、世界戦略の重要な一部です。

5社の海外戦略に共通すること

ここまで5社の事例を見てきました。

それぞれの海外戦略は、驚くほど異なります。

吉野家は、
ラーメンという新たな事業の柱を育てる。

無印良品は、
世界各地へ店舗網を広げる。

JINSは、
商品開発力とブランド力を生かす。

サイゼリヤは、
日本で磨いた経営効率を海外でも発揮する。

しまむらは、
実績のある台湾市場への投資を強める。

共通しているのは、
海外進出の方法そのものではありません。

それぞれが、
自社の強みに合った世界での勝ち方を選んでいることです。

私は、ここに世界戦略の本質があると思います。

中小企業にも、世界で勝負する道はある

ここまで読んで、
「それは大企業だからできることでしょう?」
と思われた経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、
吉野家のように海外企業を買収したり、
しまむらのように数十億円を投資したりすることは、
多くの中小企業にとって現実的ではありません。

しかし、だからといって
世界市場への挑戦を諦める必要はないと思います。

大企業と同じ方法を取る必要はないからです。

例えば、
日本のメイクブラシメーカー。

自社ブランドの商品を海外で販売するだけでなく、
海外の化粧品ブランドから製造を受託するという道も考えられます。

日本の美容サロンなら、
海外に新しい店舗を構えることだけが進出方法ではありません。

進出先の法律や営業条件を確認したうえで、
現地のお客様に美容サービスを届ける方法を探ることもできます。

日本の飲食店なら、
国内で提供している料理をそのまま海外へ持っていくのではなく、
現地の食文化に合わせた商品を開発する道もあります。

もちろん、
どの方法が適しているかは、
会社の規模、商品、技術、資金、進出先によって変わります。

だからこそ、私は海外進出のご相談を受けるとき、
最初から一つの方法を決めつけません。

「海外向けのネットショップを作りましょう」

「海外の展示会に出ましょう」

「現地に店舗を開きましょう」

そうした方法を考える前に、もっと大切なことがあります。

その会社が日本で培ってきた強みは、
世界のどこで、誰に必要とされるのか。

そして、その強みを使って、
最初の海外売上をどう生み出すのか。

そこから考えることで、
今まで見えていなかった可能性が見つかることがあります。

世界市場を考えると、会社の未来が変わる

日本で長年、
事業を続けてこられた経営者の方には、
それぞれ積み重ねてきたものがあります。

商品を磨いてきた経験。

お客様に選ばれてきた理由。

社員と一緒に乗り越えてきた苦労。

何年もかけて育ててきた技術やサービス。

それらの価値を、
日本市場だけで判断する必要はありません。

世界に目を向ければ、
日本では当たり前だと思っていたことが、
海外では魅力として受け止められる可能性もあります。

逆に、日本で成功した商品や売り方が、
そのまま海外で通用するとは限りません。

だから面白いのです。

自社の強みを、
世界という新しい舞台でどう生かすのか。

それを考えることは、
単に販売先を増やすことではありません。

これからの会社の可能性を、
もう一度見つめ直すことでもあると思います。

吉野家が、
牛丼だけでなくラーメンで世界一を目指しているように。

あなたの会社にも、
まだ気づいていない世界での勝ち方があるかもしれません。

「いつか海外へ」と考えている経営者の方。

その「いつか」を、
具体的な経営戦略として考えてみませんか?

私も世界戦略プロデューサーとして、
日本の経営者の皆さんが世界市場へ挑戦するお手伝いをしていきたいと思います。

日本市場の次は、世界市場だ。


参考記事

現代ビジネス(2026年10月27日)

「吉野家が目指す『ラーメン世界一』、しまむらは台湾増資へ…国内頭打ちを突破し“過去最高益”を連発する勝ち組チェーンの新戦略」

著者:宇野沢茂樹氏(証券アナリスト)